新品を購入して転売するには古物商許可は必要なの?

古物営業法

近頃、「新品の転売には、古物商許可が必要」という情報が錯綜していませんか?

とある行政書士は「必要」と言ったり、とあるサイトでは「しっかりとした結論」が無かったり、「古物商許可を取得しておくのが無難」などと明確になっていないなど、どの情報が正しいのか迷っている人も多いのではないでしょうか。

結論としては、
新品を購入して転売する場合には、古物商許可は必要ありません

今回は、古物営業法の趣旨に基づいて、「新品の転売」について紐解いてみたいと思います。

古物営業法の目的って?

はじめに、「古物営業法」の法の趣旨についてみてみましょう。
「古物営業法 第1条」には、「古物営業法」の目的が定義されています。

『この法律は、盗品等の売買の防止速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もって、窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。』

古物営業法 第1条

古物営業法は、「盗品等の流通防止や早期発見」を目的としていることがわかります。

メーカーや小売店等から新品を購入している場合、購入した商品が「盗品等」である可能性は低いでしょう。そのため、古物営業法の趣旨には当てはまらず、新品の転売については、古物商許可は必要ないと考えられます。

新品で購入した物品は古物営業法第2条第1項の「古物」に該当する?

メーカーや小売店等から購入した新品が、「古物営業法」の「古物」に当てはまるのかをみてみたいと思います。

「古物営業法 第2条第1項」では、「古物とは」どのような物品をいうのかが定義されています。

1度使用された物品、もしくは、使用されない物品で使用のために取引されたもの、または、これらの物品に幾分の手入れをしたもの

古物営業法 第2条第1項

新品を販売するメーカーや小売店等から、新品を購入した場合、購入の目的が「使用のため」であれば、未使用であっても「古物」に該当することとなります。

では、目的が「転売」の場合はどうなのでしょうか?

この場合、たとえ目的が「転売」であっても、メーカーや小売店等から一度でも消費者の手に渡った物品は、未使用品であったとしても古物に該当することとなります(古物営業関係法令の解釈基準等:警視庁)。
その理由は、次のとおりです。

「古物営業法 第2条第1項」にある「使用のために取引されたもの」とは、次のように解釈されています。

自己が使用し、又は他人に使用させる目的で購入等されたもの

「転売」が目的ということは、購入者自身には、使用する意思はなくても、転売先の相手方が使用することを想定していると捉えることができるでしょう。

また、転売目的で購入した新品でも、転売人の手に渡った時点で、一度は市場(しじょう)に出たことになり「古物と判断されます。
市場に出た物品である以上、盗品等の混入の可能性も出てくることから、「古物営業法」上では、「古物」に該当し、「古物営業法」の法の趣旨にも当てはまるといえるでしょう。

「古物営業法における古物」については、こちらでも解説しています。
→ 古物営業法における古物とは

新品の転売は古物営業法第2条第2項の「古物営業」に該当する?

では、新品の転売が「古物営業」に該当するのかをみてみたいと思います。
「古物営業法 第2条第2項」には、「古物営業」について定義されています。
その内容は、次のとおりです。

古物を売買し、もしくは交換し、または委託を受けて売買し、もしくは、交換する営業であって、古物を売却すること、または、自己が売却した物品を当該売却の相手方から買受ける事のみを行うもの以外

古物営業法 第2条第2項

法律の条文は、慣れていないと理解しづらいですね。
「古物営業」とは、
古物の売買」、「交換」、「委託を受けて売買」、「委託を受けて交換」を行う営業をいいます。

古物を売却することのみを行う場合は、古物営業に該当しません
※ 営業とは、営利を目的として業務を行うことをいいます。

メーカーや小売店等から購入した新品を転売する場合については、古物を仕入れたわけではないため、「古物の売買」、「古物の交換」には該当しません。
購入する以前は新品であったため、「新品を仕入れて古物を売却」することとなります。

これは、『自己が購入した物品を売却する行為のみ』であり、「古物営業」には該当しないといえるでしょう。したがって、メーカーや小売店等から新品を購入し転売する行為は、古物商許可は必要となりません。

結論としましては、
販売する物品は「古物」に該当しても、販売行為は「古物営業」に該当しないため、「古物商許可」が不要ということになります。

「古物商が必要か不要か」についての、
「古物商許可が必要か不要かを判断する方法」も参考にして下さい。
→ 古物商許可が必要か不要か判断する方法

新品の転売で古物商許可が必要なのは誰?

新品の転売における古物商許可の要否について、情報が錯綜していますが、「新品の転売」における商流について、古物商許可が必要となるのは、どのタイミングの取引なのかをみてみたいと思います。

古物商許可が必要となるのは、新品の購入者と転売を目的として取引を行う人(第三者)です。
新品を転売する人については、使用のためであったとしても、転売のためであったとしても、古物の仕入れが発生しないため、古物商許可は必要となりません。

では、具体的な商流図を以下にしまします。
古物商許可が必要となるタイミング(取引)についてみてみましょう。

新品の購入者(A)から、古物を買取る人(B)は、「単に買い取るだけ」であれば古物商許可は不要です。例えば、(A)から購入し(B)自身が使用する場合です。
しかし、(B)が買取り後に第三者(C)に転売を行う場合には、古物商許可が必要となります。

Aは、『新品の仕入+古物の売却』となり古物の売却のみを行うため、古物営業に該当しません。
Bは、第三者に転売する場合、『古物の仕入+古物の売却』となり、古物の売買を行っていることから、「古物営業に該当し、古物商許可が必要となります(古物営業法第2条第2項)。

このように、消費者や転売業者(メーカー、小売店、卸売店以外)から買い取った物品を転売する場合には、未使用であっても新品の扱いではなくなり(古物に該当)、盗品等の混入の可能性も含まれるため、古物商許可が必要となります。

「古物商が必要か不要か」については、こちらでも解説しています。
→ 古物商許可が必要か不要か判断する方法

まとめ

新品の転売は、「古物営業法」の「古物営業」には該当しないため古物商許可は不要です。

また、消費者や転売業者から買い取った物品を転売する場合には、古物商許可が必要となります。

しっかりと、流通ルートを確認し、適正な取引を行いましょう。
古物営業を行うにあたり、錯綜した情報に惑わされず、正確な情報を取得しなければなりません。

不明点や、判断に迷う場合には、管轄の警察署や専門特化した行政書士に相談しましょう。