事業を始めるときに、この取引には古物商許可が必要なのか不要なのかの判断に迷うことがあるのではないでしょうか。
どのような場合に古物商許可が必要となるのか、古物営業法で定められていますが、「表現が抽象的でよくわからない」と思われる人も多いかと思われます。
行政書士や警察署の担当者でも判断が分かれたり、誤った解釈をしていることも多く見受けられます。
この記事では、これからはじめようとするビジネスについて、古物商許可が必要か不要かを自分で判断できるよう、なるべく分かりやすく説明していきます。
目次
古物商許可が必要か不要かを判断する方法
結論から言いますと、以下の2つに該当しているかどうかを確認することです。
- 取り扱う商品が、「古物」に該当するかどうかを確認する
- 取引方法が「古物営業」に該当するかを確認する
2つのどちらにも該当する場合は、古物商許可が必要になります。
どちらにも該当しない場合や、どちらか一つだけに該当する場合は、古物商許可は不要です。。
① 取り扱う商品が「古物」に該当するかどうかを確認する
取り扱う商品(物品)が「古物」に該当していなければ、古物商許可は不要です。
具体的に見ていきます。
古物に該当するもは13品目に分類されている
「古物」とは、一度使用された物品、新品でも使用のために取引された物品、又はこれらのものに幾分の手入れをした物品をいい、古物営業法施行規則により、13品目に分類されています。
美術品類
鑑賞して楽しむもの、美術的価値を有しているもの。
(例)絵画、書、彫刻、工芸品、登録火縄銃・登録日本刀、等
衣類
繊維製品、革製品等で、主として身にまとうもの
(例)着物、洋服、その他の衣料品、敷物類、テーブル掛け、布団、帽子、旗、等
時計・宝飾品類
そのものの外見的な特徴について使用する者の嗜好によって選択され、身につけて使用される飾り物
自動車
自動車及びその物の本来的用法として自動車の一部として使用される物品
(例)その部分品を含みます。タイヤ、バンパー、カーナビ、サイドミラー等
自動二輪車及び原動機付自転車
自動二輪車及び原動機付自転車並びに、その物の本来的用法として自動二輪車及び原動機付自転車の一部として使用される物品
(例)タイヤ、サイドミラー等
自転車類
自転車及びその物の本来的用法として自転車の一部として使用される物品
(例)空気入れ、かご、カバー等
写真機類
プリズム、レンズ、反射鏡等を組み合わせて作った写真機、顕微鏡、分光器等
(例)カメラ、レンズ、ビデオカメラ、望遠鏡、双眼鏡、光学機器
事務機器類
主として計算、記録、連絡等の能率を向上させるために使用される機械及び器具
(例)レジスター、タイプライター、パソコン、ワープロ、コピー機、ファックス、シュレッダー、計算機
機械工具類
電機によって駆動する機械及び器具並びに他の物品の生産、修理等のために使用される機械及び器具のうち、事務機器類に該当しないもの
(例)スマートフォン、タブレット、工作機械、土木機械、医療機器類、家庭電化製品、家庭用ゲーム機、電話機
道具類
上記及び下記に掲げる物品以外のもの
(例)家具、楽器、運動用具、CD、DVD、ゲームソフト、玩具類、トレーディングカード、日用雑貨
皮革・ゴム製品類
主として、皮革又はゴムから作られている物品
(例)鞄、バッグ、靴、毛皮類、化学製品(ビニール製、レザー製)
書籍
金券類
(例)商品券、ビール券、乗車券、航空券、各種入場券、各種回数券、郵便切手、収入印紙、オレンジカード、テレホンカード、株主優待券
取り扱う物が、上記の13品目に該当する場合には、古物商許可が必要となります。
「古物営業法における古物」については、こちらでも解説しています。
→ 古物営業法における古物とは
古物に該当しない物
古物営業法施行規則により分類される、13品目に該当しない物は以下の通りです。
観賞用でもアクセサリーでもない貴金属
例:投機目的のインゴット・金貨・金塊・プラチナ など
消費して無くなるもの
例:化粧品、薬品、サプリメント、お酒、食品 など
物品の本来の性質、用途に変化を及ぼさないと使用できないもの
例:洋服をリメイクしてバッグにしたもの など
原材料になるもの
例:空き缶類、金属原材料、被覆いのない古銅線類 など
再利用せずに捨てるもの
例:廃品、一般ごみ など
実体がない物
例:電子チケット など
「古物」に該当しない物を取り扱う場合には、古物商許可は不要です。
取引方法が古物営業に該当するかどうかを確認する
取り扱う商品が「古物」だとわかったら、
次に、取引方法が「古物営業」に該当するかどうかを確認します。
「古物営業」は、古物営業法 第2条2項1で次のように定義されています。
古物の「売買」、「交換」、「委託を受けて売買」、「委託を受けて交換」を行う営業
古物営業法 第2条2項1
古物を扱う場合、そのほとんどが古物営業に該当するように思われがちですが、該当しないケースもあります。
実際の例をあげて、古物営業に該当するかを見てみましょう。
古物営業に該当する取引
一度使用された物品の転売
例:中古店で買った古本のセドリなど
古物を買い取って修理して販売
例:パソコンショップや、オーディオショップ、楽器店、古着屋など
古物を買い取って、部品を売る
例:中古車販売店など
古物を預かって売れたら手数料を貰う(委託販売)
例:代理商、仲立商(ブローカー)など
古物を別の物と交換する
例:古物を引き取る代わりに、お金以外の物と交換する場合
買い取った古物をレンタルする
例:レンタカー業など
国内で買った古物を海外に輸出
例:商社
「意外!古物商許可が要らないことも」古物営業に該当しない取引
続いて、古物営業に該当しない場合を見てみます。
「この取引は古物商許可が不要なの?」と、意外に思われるケースがあるかと思いますので、是非確認してみて下さい。
自分が使用した古物を売却(転売目的で買ったものは除く)
例:自分が使用した服、玩具、車、など転売目的以外で買った古物の販売は古物商許可は不要
最近はメルカリなどで不用品を販売するケースが増えていますが、この場合は、古物商許可は不要です。
お店で新品を買ってきて転売
例:ドラッグストアで商品を買って中国に転売するなど
一時期、日本のドラッグストアで紙おむつをまとめ買いして、中国へ転売するビジネスが話題になったことは記憶に新しいかもしれません。お店で新品を買って、転売することは、古物営業に当たりません。
しかし、 第三者に買ってきてもらった紙おむつを買い取り、中国に輸出する業者は「古物営業」に該当し、古物商許可が必要になるので注意が必要です。
商品がたとえ未使用であっても、一度市場で取引された商品は「古物」に該当します。
「新品の転売」については、こちらでも詳しく解説しています。
→ 新品を購入して転売するには古物商許可は必要なの?
ただでもらったものを販売
例:無償で引き取った物を修理やきれいにして売る場合など
:相続人が相続した遺品を売却する場合など
自分が海外で仕入れた古物を国内で販売
例:ヨーロッパからアンティークを輸入販売している商社など
なぜ、古物商許可が不要になるかというと、古物営業法の趣旨は、国内での盗品等の売買の防止、被害品の早期発見が目的のため、海外から仕入れたものについては、法律の趣旨と異なるためです。
自分が売ったものを相手から買い戻す
例:お試しキャンペーンなどで販売してキャンセルになった商品など
メーカーが行うキャンペーンの場合が多いかと思います。
この場合、販売は小売店が行って、買い取りはメーカーや広告代理店など、販売した業者以外が買い取る場合は、買い取る会社に古物商許可が必要となるので注意が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
古物営業法には、古物商許可が必要な場合が書かれているものの、このように見ていくと、一見、古物商許可が必要と思っていたら、不要であったり、その逆もあったかもしれません。
古物商許可を取得しないで古物商を営むと、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる恐れがあります。
また、必要がないにもかかわらず、古物商許可を取得してしまい、申請費用が 無駄になってしまう場合もあります。。
そうならないよう、事前にしっかりと確認することをお勧めします。
古物商許可が必要か不要かを判断する方法は、以下の2つに該当しているかどうかを確認することです。
・取り扱う商品が、「古物」かどうかを確認する
・取引方法が「古物営業」に該当するかを確認する
自分で確認してみても判断に迷う場合は、管轄警察署の生活安全課や、古物商許可専門の行政書士に問い合わせしてみましょう。