古物営業を行う上では、「古物営業法」に規定される各種の義務を把握しておく必要があります。
「古物営業法」に規定されている、違反行為を行った場合には、罰則や行政処分の対象となることがあります。
今回は、「古物営業法」に規定される、罰則・行政処分についてみてみたいと思います。
目次
古物営業法に規定される罰則
古物営業法(第31条から第39条:第6章 罰則)には、古物商に対する各種義務が定められ、法令違反行為と、違反した場合の罰則が定義されています。
以下に古物営業法違反に対する罰則(刑罰)の一覧を示します。
罰則規定 | 法令違反行為 | 義務付け規定 |
3年以下の懲役 または100万円以下の罰金 (古物営業法第31条) |
無許可営業 名義貸し 不正手段により許可を受ける行為 営業停止命令違反 |
第3条 第9条 第24条 |
1年以下の懲役 または50万円以下の罰金 (古物営業法第32条) |
古物商の営業制限違反 | 第14条 |
6月以下の懲役 または30万円以下の罰金 (古物営業法33条) |
古物市場での取引制限違反 確認等義務違反 帳簿等記載等義務違反 帳簿等備付け等義務違反 帳簿等き損等届出義務違反 品触書保存等義務違反 品触れ相当品届出義務違反 差止め物品保管義務違反 古物競りあっせん業者の競りの中止命令違反 |
第14条第2項 第15条第1項 第16条、第17条 第18条第1項 第18条第2項 第19条第2項 第19条第3項、第4項 第21条 第21条第7項 |
20万円以下の罰金 (古物営業法第34条) |
競り売り届け出義務違反 許可申請書等虚偽記載 |
第10条 第5条第1項 |
10万円以下の罰金 (古物営業法第35条) |
立入り等の拒否等 許可証返納義務違反 許可証携帯等義務違反 報告義務違反 標識掲示義務違反 変更届出義務違反 |
第22条第1項 第8条第1項第3号 第11条第1項、第2項 第22条第3項 第12条 第7条、第5条第3項 |
※情状により、懲役および罰金を併科することができる
※「無許可営業」、「名義貸し」、「営業停止命令違反」については、
「許可の取消し」となることもある
拘留または科料 (古物営業法第37条) |
過失による品触れの届出違反 | 第19条第5項、第6項 |
5万円以下の過料 (古物営業法39条) |
許可証の再交付における許可証の返納義務違反 | 第8条第3項 |
営業停止命令 | 管理者選任義務違反 | 第13条第1項 |
営業停止命令 | 不正品申告義務違反 | 第15条第2項第3号 |
営業停止命令 | 指示違反 | 第23条 |
古物営業に関し法令違反 |
「無許可営業」、「名義貸し」、「不正手段により許可を受ける行為」「営業停止命令違反」を行った場合には、「3年以下の懲役、又は100万円以下の罰金」だけでなく、「許可の取消し」となります。
「名義貸し」に該当する場合
古物商許可を取得したが自らが古物営業を行わず、自己名義で他人に営業させる場合や、役員が個人名義で古物商許可を取得し、法人名義で古物営業を行ったような場合などが、「名義貸し」に該当してしまうこととなります。
古物商許可は、営業を行う人格で取得しなければなりません。
「営業停止命令違反」に該当する場合
古物営業を行ううえで、法令違反等の行為を行った場合に、公安委員会より営業停止命令を受けることがあります。
営業停止命令を受けたにもかかわらず、古物営業を継続して行った場合などに、「営業停止命令違反」に該当することとなります。
違反行為をしっかりと把握し、法令違反がないよう古物営業を営みましょう。
公安委員会による行政処分は3種類
古物営業を行う上で、法令違反(古物営業法違反)行為をおこなった場合に、公安委員会による行政処分の対象となる場合があります。
行政処分には、次の3つがあり、情状により判断され処分を受けることとなります。
行政処分 | 対象行為 |
許可の取消し (古物営業法第6条) |
➀古物営業の実態が6ヶ月以上存在しない ➁3ヶ月以上古物商の方の所在が不明 ③許可の欠格事由に該当することが判明したとき ④古物商とその従業員が古物営業法等に違反する行為をした ⑤公安委員会の処分に違反した |
営業の停止 (古物営業法第24条) |
「古物商とその従業員が古物営業法等に違反する行為」、 「公安委員会の処分に違反」によって、 盗品等の売買の防止や盗品等の速やかな発見が 著しく阻害されるおそれがあると認められるとき |
指示 (古物営業法第23条) |
「営業の停止」の原因となる行為に対し、 公安委員会が適正業務を行うために必要な措置をとるよう 文書によって違反行為を戒めるとき |
法令違反の内容により判断され、最も重い処分は、「許可の取消し」となります。
それでは、それぞれの行政処分と対象行為について具体的にみてみたいと思います。
古物営業の実態が6ヶ月以上存在しないとき
許可取得後、6ヶ月を経過しているにもかかわらず、古物営業を開始しない場合や、古物事業を6ヶ月休眠しているにもかかわらず、再開の目途が立っていない場合などです。
このような場合は、「許可の取消し」の対象となります(古物営業法 第6条第3項)。
3ヶ月以上古物商の方の所在が不明のとき
「連絡がつかない」、「郵便物が返送されてしまう」など、公安委員会が3ヶ月以上所在地を確認できない場合です。
官報により告知をしたにもかかわらず、30日を経過しても、なお所在地を確認できない場合には、許可を取り消すことができます(簡易取消し)。
許可の欠格事由に該当することが判明したとき
古物商許可申請の時点では、欠格要件に該当しなかったが、許可取得後の事情により、欠格要件に該当することとなってしまった場合です(古物営業法 第4条)。
古物商とその従業員が古物営業法等に違反する行為をしたとき
古物商許可を受けた古物営業者が、古物営業法の各種規定に違反する行為を行った場合です。違反行為を行った者については、従業員も含まれるため注意が必要です。
公安委員会の処分に違反したとき
営業停止命令を受けているにもかかわらず、古物営業を行った場合などです。
営業の停止について(古物営業法第24条)
古物営業を営む上で、古物営業法の規定に違反する行為を行うことで、「盗品等の売買等の防止」、「盗品等の速やかな発見」が阻害されるおそれがある場合や、公安委員会から受けた処分に違反した場合、6ヶ月以内の期間を定めて、営業の停止処分を受けることがあります。
情状が特に重い場合には、許可の取消しとなることもありますんで、注意しましょう。
指示について(古物営業法第23条)
古物営業を営む上で、古物営業法の規定に違反する行為を行うことで、「盗品等の売買等の防止」、「盗品等の速やかな発見」が阻害されるおそれがある場合に、適正な古物営業の実施を確保するために必要となる措置を施すよう、公安委員会より指示を受ける場合があります。
文書によって指示を受けることになります。
指示に従わなかった場合、営業の停止処分を受ける事にもなりかねるので、即座に対応するようにしましょう。
古物営業法に違反すると、欠格要件に該当してしまう
古物営業法の各規程に違反した場合、古物商許可の「罰金」や「許可の取消し」となることがあります。
このようなペナルティを受けた場合、欠格要件に該当することとなってしまうため気を付けなければなりません。
欠格要件に該当となる条文は、以下のとおりです。
『禁固以上の刑に処せられ、又は第31条(罰則)に規定する罪若しくは刑法に規定する罪を犯して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることのなくなった日から起算して5年を経過しない者』
『禁固以上の刑に処せられ、又は古物営業法第31条に規定する罪若しくは刑法第235条(窃盗罪)、第247条(背任罪)、第254条(遺失物横領の罪)若しくは第256条第2項(盗品等運搬、盗品等保管、盗品等有償譲受け、又は有償の処分あっせん)に規定する罪を犯して罰金の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることのなくなった日から起算して5年を経過しない者』
『古物営業の許可を取り消され、当該取消しの日から起算して5年を経過しない者(許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日前60日以内に当該法人の役員であった者で当該取消しの日から起算して5年を経過しない者を含む)』(古物営業法 第4条第6項)
古物営業法
この場合、「許可の取消し」処分を受け、さらに、取消しの日から5年間が経過しないと、再度「古物商許可」を取得することができません。
「欠格要件」については、こちらでも解説しています。
→ 古物商許可が受けられない?欠格要件について
まとめ
・古物営業法の規定に違反する行為を行うと罰則を受ける場合がある
・古物営業法の規定に違反すると、行政処分を受ける場合があり、行政処分には、3つの処分がある
➀指示
➁営業停止命令
③許可の取消し
・「許可の取消し」を受けると、欠格要件に該当するため、
5年間は古物商許可を取得できない