古物商許可の法人申請における「定款」の準備

古物商許可申請

法人の事業で古物営業を展開する際には、古物商許可が必要となります。
法人で古物商許可を申請するには、添付書類として「定款」を提出しなければなりません。

今回は、古物商許可申請における「定款」について触れてみたいと思います。

定款ってなに?

「定款」とは、会社の設立手続き上、必ず作成しなければならなく、設立する会社の根本規則を定めた書類です。

法務局で取得できる「履歴事項全部証明書」(法人登記簿)と勘違いしている人も多いのではないでしょうか?

「定款」は、会社で保管されている書類で、基本的な規則をまとめた冊子をいいます。1部を会社(本店および支店)に備え付けておかなければなりません(会社法 第31条)。

「定款」の記載事項は「会社法 第26条」に規定され、大きく次の3つに分かれています。

➀絶対的記載事項
(商号、本店所在地、目的、発起人、資本金など)

②相対的記載事項
(定款に定めないと、効力が認められない事項で、株式譲渡制限、役員の任期、公告の方法など)

③任意的記載事項
(定款に定めても定めなくてもいい事項で、事業年度、役員の数、基準日など)

会社設立時に作成し、公証人の認証を受けたものが正式な定款となり、最初の定款という意味で「原始定款」といいます。

定款は内容変更ができる

会社設立後、事業を運営していくうえで、設立当初とは事業内容に変更が生じるといった場合があります。
「定款」は、事業運営の途中で内容を変更できる書類です(会社法 第466条)。

事業目的を変更するなど、定款の内容を変更したい場合は、株主総会を開き、株主総会議事録を作成します(会社法 第318条 第1項)。

作成した株主総会議事録は、「原始定款」と合綴(がってつ)することで、内容変更の経緯がわかります。
内容変更を繰り返すと議事録が多くなり、変更経緯の確認や、提出の際の準備が手間になることもあるのではないでしょうか?
そこで、「原始定款」の内容に変更を加え、最新の状態に作り直すこともできます。

この作り直した「定款」を「現行定款」といいます。

「原始定款」 + 「株主総会議事録」 ⇒ 「現行定款」

「現行定款」は、「原始定款」のように、公証人による認証の必要はありません。適切に保管をするようにしましょう。

※【合綴】(がってつ):いくつかの用紙や冊子などをとじ合わせて、一つにすること。

「定款」を紛失してしまったときの4つの対処法

「定款」は、会社法にも規定される通り、大切に保管しなければならない書類ですが、何らかの理由で紛失してしまった場合はどのように対処すればよいのでしょうか?

「定款」は、会社で保管しているほか、認証を受けた公証役場や、法務局で保管されている可能性もあります。

1.設立時に定款認証を受けた公証役場で再発行

会社設立時に、定款認証のため公証役場に提出した「原始定款」は、20年間保管されています。認証を受けた公証役場が分かっている場合は、保管期限内であれば、「原始定款」の謄本(写し)を請求することができます。

発行されるのは「原始定款」であるため、過去に定款の変更を行っている場合には注意が必要です。

2.同一の情報の提供の請求

電子定款で認証を受けた場合には、電子認証制度のオンラインシステムを利用して「同一の情報の提供の請求」という手続きによって「原始定款」の書面あるいはデータを発行してもらうこともできます。

発行されるのは「原始定款」であるため、過去に定款の変更を行っている場合には注意が必要です。

3.法務局で書類閲覧

会社設立後5年以内であれば、法務局で、会社設立登記の際に提出した書類を閲覧することができます。

「付属書類閲覧申請」という手続きを行い、登記申請書と付属書類の閲覧のみすることができます。

登記申請の際に提出した添付書類の「定款」の内容を閲覧し、定款作成することになります。

4.定款の再作成

紛失してしまった結果、どうしても「定款」を準備することができない場合には、「履歴事項全部証明書」(法人登記簿)や「株主総会議事録」などの情報を基に、再作成することになります。

「定款」の再作成は、「原始定款」のような、公証人による認証は必要ありませんが、過去の内容変更については、しっかりと反映させる必要があります。

「定款」の紛失などで困っているようでしたら、司法書士や行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。

定款の原本証明(奥書)

古物商許可申請の際に提出する「定款」は、コピーを提出します。
「原始定款」、「現行定款」のどちらを提出する場合でも、定款のコピーを用意し、「原本証明」が必要となります。

では、「原本証明」とはどういったものなのでしょうか?

コピーした「定款」の最終ページに以下の内容を赤字で記載(朱字)します。

『 以上、原本に相違ありません。
  令和 〇 年 〇 月 〇 日
  株式会社□□□□
  代表取締役 △△ △△    印
 』

印鑑は、法人代表者印を捺印し、シャチハタは不可です。
すべてを赤字で記載する必要があります。これを「奥書」といいます。

原本の写し(コピー)を提出する場合、原本の写しであることを申請者が証明する必要があります。
申請者が「奥書」を朱字することにより、提出する「定款」のコピーは、原本と同一であることを証明することができます。これを「原本証明」といいます。

古物商許可申請における「定款」は、必ず最終ページに「奥書」を記載しなければならないので注意しましょう。

古物商許可申請における「定款」の提出については、都道府県公安委員会ごとに異なる場合もあります。
「製本された定款」の提出を求められることもありますので、事前に管轄警察署に確認するとよいでしょう。

事業目的の確認はしっかりと

定款には記載事項に決まりがあり、「事業の目的」は絶対的記載事項のため必ず記載されています。

古物商許可申請においては、「古物営業を営む」旨の内容が読み取れる事業目的の記載が必要となります。
たとえば、「古物営業法に基づく古物商」、「古物の売買」、「古物商」などといった目的が入っていることが望ましいでしょう。
これは、申請法人が事業として、古物営業を営む意思があるのかを確認するためです。

古物商許可を申請する際には、事前に、「定款」、「履歴事項全部証明書」(法人登記簿)の目的内容をしっかりと確認しましょう。

事業目的の記載内容などについて判断に迷う場合は、管轄の警察署や専門の行政書士に相談することをおすすめします。

事業目的に「古物営業を営む旨」の記載がないとき

事業目的を確認した際、「古物営業を営む」旨の記載がない場合には、
古物商許可申請はできないのでしょうか?

事業目的の追加・変更には、株主総会を開催し、事業目的の追加を決定後、法人登記簿の変更手続きを行います。
それなりの時間と手間がかかるため、申請時に目的事項が不足しているとしても、

古物商許可は申請できます。

しかし、古物商許可申請のための事業目的が不足していることは事実です。古物営業を行う旨が読み取れない事業目的では、申請書を受理してもらえず対応が必要となります。
このとき必要となるのが、「確認書」という書類です。

「確認書」とは、「定款」、「法人登記簿」の事業目的に、「古物商を営む旨を直ちに追加します」といった内容を確認するための書類です。
「確認書」を提出することにより、事業目的が不足していても申請書を受理してもらえます。

変更登記手続きを行いましょう

申請書が受理された場合、警察署の審査期間が40日程度かかります。その期間内に事業目的の追加手続き(変更登記)を行いましょう。
変更登記手続きが完了したら、「履歴事項全部証明書」や「議事録」を追って提出することになります。

古物商許可申請において、書類の作成や準備に困っている場合は、専門特化した行政書士に相談することをおすすめします。

まとめ

・法人で古物商許可を申請する場合、「定款」は必要書類
・「定款」は会社(本社および支店)で保管する義務がある
・「定款」は、紛失してしまっても再発行できる可能性がある
・「定款」は、再作成することができる
・「定款」の事業目的に、古物営業を行う旨の記載が必要
・提出する「定款」は原本証明(奥書)しなければならない